日本語フィルター

 

ニューヨークあるあるか分からないけど、たまたま入ったレストランで隣が日本人だったりすると結構気を使う。

 

昨日は隣の席で日本人同士がデートしてたんだけど、僕はといえば20分近く待ち合わせに遅れている相手を待ちながら、一人隣の席でiPhoneをいじっていた。

 

日本だったら、隣の席が日本人なんて当たり前だろうけど、ニューヨークではその確率は低い。

 

その日は、たまたま日本人出現スポットである日本食レストランに行っていたため、そのような状況に陥った。

 

 

席も近く、男女の会話の内容が筒抜けだったので、ちょっとした気まずい雰囲気を感じた。

 

それに、二人の関係はこれからって感じだったし。それ自体にも緊張感があった。

 

 

 

 

本来ニューヨークは他民族の都市だ。

 

見渡せば、さまざまな人種と国籍の人たちが行き来している。

「はい、今から日本人を探してください。」と言われても10分以内に探すのはちょっと難しいかもしれない。

 

僕もよく中国語で話しかけられるし、もうみんな誰が誰だかわからない。

まさにボーダレスシティー。

 

 

中国語、スペイン語、ポルトガル語、フランス語、韓国語、ロシア語、イタリア語など1日にいくつもの意味の分からない言葉を、浴びせられている。

 

つまり、ここに住む多くの人が英語以外の第一言語を日常的に話している。

 

もちろん共通語として英語を使うシーンは多いけど、同じ国の者同士は、基本的に母国語をプライベート言語として使っている。

 

当たり前かもしれないが、ロシア人はロシア人とつるむし、中国人は中国人、韓国人は韓国人。日本人には日本人のコミュニティがあり、つるんでよく話している。

 

 

 

そんな彼らの会話と、一方で街の共通語、英語との間にある溝。

僕はこれを言語フィルターと名付けたい。

 

 

おそらく多くアメリカ人が知らない秘密の言語を僕たちは使っている。なんだかちょっとクールだ。

 

もちろん日本語はその中のひとつで、日本語フィルターが働くことになる。

 

 

フィルターが働くのため、東京の公共の場だとふつうに話せないことも、平気でどこでも話している。

 

こないだは、電車の中で「AV大好きです!」とか悪ふざけで連呼していた。友だちと酔っていたのもありますが。

 

あんまり悪いことは言えないけど、目の前の人の噂をすることもたまにある。

 

何が楽しいのかは分からないが、けっこう楽しい。

 

ただカタカナ系の言葉は、直訳も多いので気をつけなければならない。

 

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話を戻すと、そんなフィルター環境になれてしまい、いざ隣の席が日本人同士だと、会話が丸分かりなってしまうことに恥ずかしさを覚える。

 

今回の場合は、僕は彼らのデートにはお邪魔だっただろう。

 

そんな状況で、待ち合わせ時間はすでに30分をすぎていた。

 

1時間待って来ないなら帰ろうと心に決め、彼らに言語フィルターを戻すために僕はバーカウンターへと席を移動した。

 

気まずい空気はさっと消えた。

これで彼らの会話も弾み、上手くいくといいな。

 

 

バーカウンターでKindleで本を読みつつ、先に越後ルービーをいただいていた。

 

1人で一杯飲む時間も決して悪くはない。

 

そんなことを思いながら、Kindleで付箋を取ろうとしたとこで待ち合わせ人は隣に立っていた。

 

 

訪れはいつも不意である。